働き方の多様化が求められるようになった今、従業員満足度を重要と考える企業が増えています。
満足度が高まると、優秀な人材の定着・生産性向上等、企業のメリットが大きいことが理由のひとつです。
この記事では、従業員満足度とはなにか、また満足度を高めるために必要な要素や調査の流れを解説します。
また、すぐに実施できる取り組みもご紹介しますので、是非参考にしてください。
従業員満足度とはなにか|重視される背景や英語表記を紹介
従業員満足度とは「企業にどの程度満足しているか」を表す指標
従業員満足度とは、従業員が「働く職場として企業にどの程度満足しているか」を表す指標です。
英語では「Employee Satisfaction」と表記されるため、頭文字をとって「ES」と略されることもあります。
満足度は、給与やポジションといった待遇面だけで測るものではありません。
福利厚生・職場環境・人間関係・やりがい等、幅広い項目で判断されます。
定期的にアンケートを取り、会社への満足度を調査します。
不満があれば改善に繋げることも可能です。
定期的に従業員満足度をチェックすることで、会社・従業員双方にとってプラスに働くことができるでしょう。
【重視される背景】労働人口の減少・働き方の多様化
大量生産・大量消費の時代には、企業は顧客満足度だけを重要視してきましたが、従業員満足度も重視する企業が増えてきました。
それには、大きく3つの理由があります。
ひとつ目は、企業に対する貢献度への期待です。
厚生労働省が行った調査によると、顧客・従業員双方の満足度を意識した企業の方が、顧客のみの満足度重視の会社に比べて売上等の業績が増加していることがわかります。
参考:厚生労働省「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」
2つ目は、労働人口の減少による人手不足です。
少子高齢化が進み、生産年齢人口と言われる15歳~64歳の人口が減少しているため、企業にとって労働力の確保が重要な課題になっています。従業員満足度の高い企業には人が集まりやすく、優秀な人材確保には満足度向上が欠かせません。
3つ目は、働き方の多様化です。
終身雇用を重視する人は減り、キャリアアップや働き方の見直しのために転職するケースが増えています。労働時間の減少・ワークスタイルの自由化等、多様な働き方を選択できる企業であることが人材確保に繋がります。
混同しやすいワード「従業員エンゲージメント」との違い
従業員エンゲージメントは、1990年代に米国で生まれた概念です。
従業員が企業に貢献したいと思っているかどうかを評価します。
両者の違いは以下の通りです。
従業員満足度 | 従業員が企業に対して満足しているかどうか |
従業員エンゲージメント | 従業員が企業に対して貢献したいと思っているかどうか |
従業員満足度は、あくまでも企業に従業員が満足しているかを示すもので、貢献したいかどうかは関係ありません。
満足度が上がることで、モチベーションに繋がり生産性に影響することはあるでしょう。
しかし、満足度=貢献度になるとは限らないということです。
従業員満足度が高い企業を目指す|満たしたい5つの要素
①企業の方向性・経営ビジョンに共感している
従業員は企業のビジョンに共感していると、会社に対する期待が大きくなります。
また、その会社に所属していることに誇りを持つようになります。
従業員満足度が高い企業を目指すなら、まずは企業の経営ビジョンを従業員に理解されるよう努めることが大切です。
無理やり共感させるのでは意味がなく、反感を抱く可能性もあります。
日頃から企業の方向性・経営ビジョンについてかみ砕いてわかりやすく説明していくことが大切だと言えるでしょう。
②業務内容にやりがい・働きがいがある
仕事内容にやりがいや働きがいを見いだせると、満足度が高まる傾向にあります。
快適に働くための就労・報酬条件が整った「働きやすい」環境で、仕事に対するモチベーションが高まり「やりがい」がアップすると、「働きがい」があると感じます。
仕事に対するモチベーションは、個人の内面の変化であるため目に見えにくい特徴がありますが、仕事に誇りを感じている・成長を感じている場合に満足度が高まりやすいです。
また、個人を活かせる環境に人材を配置できている企業ほど、働きがいを感じる従業員は多くなります。
③マネジメント能力・教育体制に納得している
従業員満足度は、会社のマネジメントや教育体制への納得感に左右されます。
上司から権限を与えられることで、信頼されている・承認されているといった気持ちが高まり、満足度が高くなるのです。
普段からコミュニケーションを取り、部下の想いに気が付く上司の存在が必要になります。
そのためには、上司の満足度も高くなければなりません。
また、会社の教育体制が整っていれば、スキルアップが期待できると感じ、満足度は高くなります。教育コストがかかっても、従業員満足度が上がり優秀な人材を定着させることができれば、企業にとっては大きなプラスになるでしょう。
④福利厚生や給与等に不満がない
従業員満足度を高めるには、福利厚生や給与等の待遇が重要です。
福利厚生では、各種手当や休暇制度に関心が高い人が多く、充実している会社に人が集まりやすいです。また、福利厚生の整った会社の従業員は、満足度が高い傾向にあります。
さらに、労働の対価である報酬が、成果に見合った額であることは満足度に直結します。
社内評価を正しく行うことはもちろん、同業他社と比較してみることも大切です。
⑤職場環境・人間関係が快適である
従業員が企業に期待するもののひとつに、職場環境や人間関係があります。
長時間過ごす職場の環境は、満足度を向上させる重要な要素です。
厚生労働省が発表した雇用動向調査結果の概況によると、退職理由として「職場の人間関係」を挙げる人の割合は男性8.8%・女性13.3%と高い傾向にあります。
前年と比較すると男女ともに減っているため、人間関係が改善しているようにも受け取れますが、人間関係を重視する人の割合が多いことがわかるでしょう。
良い職場環境・良い人間関係として求められる例として、以下が挙げられます。
- 就業規則が整備されている
- 業務効率を高める仕組みがある
- ライフワークバランスが取れる
- オフィスが清潔な環境である
- 禁煙や分煙が徹底されている
- 風通しの良い職場である
これらは、求人広告等で見かける企業のアピールポイントとも言えます。
どのような環境であれば長く働きたいと思うかという視点で考えると、従業員満足度を高くするヒントとなるでしょう。
従業員満足度が高くなると企業にどんな効果があるのか
従業員満足度が高まると、企業にも大きなメリットがあります。
ここでは代表的な3つのメリットをご紹介しましょう。
・顧客満足度(Customer Satisfaction)が向上する
従業員自身が不満を抱えたままでは、顧客へのサービスの質に影響が出ることがあります。
一方、従業員が企業に満足できていれば、顧客へのサービスや商品の質に心を向けることが可能です。従業員が満たされた状態で顧客に接することで、印象は大きく違います。
経営者は顧客の満足度を上げたければ、目の前のスタッフを大切にすることが近道なのです。
・企業全体の生産性が向上する
従業員満足度の高い会社の社員は、モチベーション高く積極的に業務に取り組む傾向があります。結果として、企業全体の生産性が向上するケースが多いです。
また、コミュニケーションの活性化にも繋がり、新サービスの開発といったイノベーションが起きやすいのがメリットと言えます。
・離職率の低下・定着率のアップに繋がる
従業員満足度の高い会社は、人材流出を阻止することが可能です。
離職率が低下し、優秀な人材を定着させることもできるでしょう。
自社の従業員満足度はどう測る? 調査の流れを紹介
自社の従業員満足度はどのように測るのでしょうか。
調査の流れは以下の通りです。
①調査票を作成する
年齢・性別・役職を聞いておくと、それぞれの満足度の違いがわかりますが、個人を特定できない方法で調査を行うと、生の声を確認しやすくなります。
次のように分類して調査を行うと良いでしょう。
- 会社について
- 上司について
- 職場環境について
- 業務内容や負荷について
- 評価制度について
②従業員に配布し回答後、回収
調査票を従業員に配布し、回答を促します。
オンラインで行えるアンケートツール等を利用すると、匿名で行いやすく回答率も上がります。アンケートの内容が評価に関係しないことを周知しておくことも大切です。
③集計・分析・課題抽出
収集したデータを分析し、課題を確認します。
項目ごとの分析だけでなく、性別・年齢・役職別のクロス集計も行うと、具体的な課題や解決方法を導き出すことが可能です。
④対策検討・実行
アンケートを分析して終了では、従業員満足度を測った意味がありません。
大切なのは、満足度を向上するための対策を検討し、実施することです。
また、対策実施後も定期的に調査票を配布し、従業員満足度が高まっているかを確認するようにしましょう。
従業員満足度を高めるための具体的な取り組み
企業の方針を従業員へ共有・定期的に面談を実施する
従業員満足度を高めるには、会社のビジョンや方針を共有することが大切になります。
ポイントは、トップダウンで一方的に目標を掲げるのではなく、従業員が企業の一員であることを感じられるように浸透させることです。
定期的な面談で企業の目標を個人の目標に落とし込み、上司と部下が共有します。
目標を可視化することで意識が高まり、適切なフィードバックがあれば、業務に対する達成感を抱きやすくなるでしょう。
職場環境を改善する(評価基準・ツールの導入)
職場環境を整えることも大切な取り組みです。
業務効率の向上に役立つ仕組みを積極的に取り入れている会社や、生産性が向上するシステムの導入に前向きな企業では従業員満足度が高まります。
また、評価や報酬の基準が明確で、平等かつ正当に評価される仕組みがあれば、モチベーションをアップさせることができ、従業員満足度は高まるでしょう。
部下がどのようなことに悩み、何を改善したいと考えているのか、日頃からアンテナを張っておくことが大切です。意見が言いやすい・相談しやすい風通しの良い会社であることも重要なポイントになります。
従業員の裁量を広げる
従業員満足度を高めるには、従業員が仕事にやりがいを見いだせるような仕組みの導入も有効な施策です。それには、人材育成の手法として注目されているエンパワーメントの考え方が役立ちます。
エンパワーメントとは、権限を与えてあげること・自信を与えてあげることです。
従来、上司や管理職が行っている業務を部下ができるような権限を少しずつ与え、自ら判断を行うチャンスを作ることで働きがいを感じられるようになります。
従業員の裁量を広げることで部下の能力を引き出し、成長に繋げることも可能です。
新たな福利厚生を導入する
福利厚生を充実させることで、従業員はプライベートが安定します。スキルアップのサポートにも繋がります。また、企業の信頼性も向上するでしょう。
育児支援や資格取得サポート、財産形成支援・企業年金制度等、福利厚生の種類は幅が広いです。従業員が希望する福利厚生を導入することで満足度向上が期待できます。
ただし、導入した制度を廃止するのは難しいものです。新たに福利厚生を導入する場合は、費用や運用工数も考慮しながら慎重に選ぶようにしてください。
従業員満足度が低い企業必見! 向上に成功した企業の事例
企業事例1.通勤サポート制度の導入
EC事業や決済事業等を手がける株式会社Rでは、近距離通勤を支援する制度を導入し、従業員満足度の向上に成功しています。
会社から3km以内に住んでいる社員に、毎月2万円の手当が支給される制度です。
約3分の1の社員が近くに住んで自転車で通勤しています。
朝のラッシュによる疲れがないため、仕事のモチベーションが向上し、ワークライフバランスに大きく影響している好事例です。
会社と自宅が近いため、早く帰ることができプライベートの時間が充実したというスタッフが増えています。
企業事例2.働き方改革を実施
グループウェア開発等を手がけるS株式会社では、100人いれば100通りの働き方があるという考えのもと働き方改革を実施しています。サイボウズは、一人ひとりの希望に合った働き方が選択可能です。
一律で時短労働を選択するのではなく、週3日だけ働く人がいれば時短勤務を選択する人もいます。在宅勤務をする人がいれば、子連れ出勤をする人もいます。
それぞれが自分の個性に合った方法で働ける組織を作ったのです。
この働き方改革により、従業員満足度が向上し離職率低下に寄与しています。
企業事例3.企業理念の浸透
ビジネス情報インフラを提供している株式会社Yでは、社員の増加に伴い理念やビジョンを浸透させることに力を入れてきました。組織の価値観を共有することが重要だと考えたのです。
従業員が守る7つのルールを決め、ルールをブレイクダウンした31の約束を制定しました。
7つのルールも31の約束もイラスト付きの冊子で、すべきこと・すべきではないことがわかりやすくまとめられています。
行動指針がはっきりしているため、新メンバーにも浸透しやすく、従業員満足度の向上に繋がっています。
経理業務を効率化できる「oneplat」は従業員満足度の向上に繋がる
紙で発行していた納品書・請求書を電子化できる「oneplat」は、経理業務に関わる従業員の満足度を向上するのに有効です。
「oneplat」の利用で納品書・請求書の突合作業が不要になり、経理の毎日の業務量の削減が期待できます。入力や突合作業等がなくなることで、より経営に近い管理会計等に人員を割くことができるでしょう。
また、これまでリモートワークが難しかった経理部門でもリモートワークができるようになることもメリットのひとつです。経理部を含む全社を挙げてリモートワークを推進することができます。
紙の納品書・請求書がなくなることで、以前話題になった「承認印のための出社」といった課題も解決するでしょう。アプリで簡単に承認ができるので、上長、役員、経営者等の決裁者の出社も不要になります。
さらに、出張中の上長の決済を待って退社できないといった事態も回避できます。
業務が効率化され負担が減れば、従業員満足度の向上にも繋がるでしょう。
まとめ
従業員満足度について、調査方法や向上させるポイントを解説してきました。
従業員満足度は、企業にどの程度満足しているかを示す指標です。
働き方の多様化が進むにつれ、顧客満足度に加えて従業員満足度を重視する企業が増えています。
従業員満足度が高まることで、顧客満足度が上がり、生産性向上・離職率の低下等、企業のメリットも大きくなります。
定期的に調査・分析を行い、ご紹介した従業員満足度を高めるための取り組みを行ってみてはいかがでしょうか。